地方銀行の現実。金利上昇で儲かっているのに、地銀の未来は厳しい…

私は地方銀行に勤めています。

最近、地方銀行に関するニュースを見ていると、かなり景気のいい話が目に入ります。

「金利上昇で地銀の業績が改善」
「地銀の8割が増益」
「過去最高益を更新する銀行も」

実際、2025年4~9月期には、上場地銀73行・グループのうち60社が増益または黒字転換となりました。連結純利益の合計も前年同期比27%増の8,373億円です。

一見すると、

「金利が上がって、銀行はこれから儲かる時代になった」

ように見えます。

しかし、地方銀行の中で働いている私からすると、少し違った景色が見えています。

私はむしろ、これから地方銀行の淘汰が本格化するのではないかと思っています。

もちろん、明日銀行が潰れるという話ではありません。

むしろ問題なのは、今後5年、10年、15年という長い時間で見たときに「今の数の地方銀行を維持できるのか」ということです。

目次

過去10年、地銀はなんだかんだ成長してきた

地方銀行を取り巻く環境は、長い間かなり厳しいものでした。

日銀の低金利政策。

人口減少。地方企業の減少。融資先の減少。

それでも、多くの地銀は預金と貸出金を伸ばしてきました。

その背景には、コロナ禍もあります。

コロナ融資によって、多くの企業に資金が供給されました。

銀行にとっても、融資残高を増やす大きな機会になりました。

低金利なので利ざやは厳しい。

それでも、預金も融資も少しずつ増えていく。

そんな状態で、なんだかんだ10年近くやってくることができました。

そして現在、日本は金利のある世界に戻りつつあります。

ここから、地銀の本当の実力差が見えてくるのではないかと思っています。

金利上昇で「預金の取り合い」が始まった

低金利の時代には、銀行によって預金金利に多少の差があっても、そこまで大きな問題にはなりませんでした。

例えば、

A銀行 0.1%   B銀行 0.2%

だったとしても、

「わざわざ銀行を変えるほどでもない」

という人が多かったと思います。

ところが、金利水準そのものが上がってくると話が変わります。

銀行同士の金利差が広がれば、預金者にとっても無視できない金額になります。

すると、「どこの銀行に預けるか」が以前より重要になります。

そして、ここで地銀の体力差が出てきます。

預金を集められる銀行には、いくつかの強みがあります。

  • 知名度がある。
  • 店舗や顧客基盤が大きい。
  • 給与振込などのメインバンクとして使われている。
  • ネット銀行などと競争できる商品を出せる。
  • そして何より、金利を上げても耐えられる体力がある。

逆に、規模の小さい銀行ほど、

「預金を集めたい」

「金利を上げる」

「調達コストが上昇する」

という問題を抱えやすくなります。

金利上昇は、すべての銀行に平等な追い風ではありません。

むしろ、銀行間の体力差を拡大させる可能性があります。

NISAも銀行預金にとっては逆風

そしてもう一つ無視できないのが、NISAです。

新NISAによって、日本人の資産形成に対する考え方はかなり変わりました。

「銀行に預けておけばいい」という考え方から、

「余剰資金は投資に回そう」という人が増えています。

金融庁のNISA調査でも、NISA口座数や買付額は継続的に拡大しています。

もちろん、NISAを利用したからといって、すべての資金が銀行預金から流出するわけではありません。

しかし、これは長期的には銀行にとって無視できない変化だと思います。

特に若い世代ほど、「銀行にお金を置いておく」ことと、

「証券口座でインデックスファンドを積み立てる」ことを比較するようになっています。

そして一度ネット証券を使い始めると、銀行の店舗に行く必要性はどんどん低下します。

これは銀行にとってかなり大きな変化です。

銀行は「規模の経済」が強く働く

ここが私が地銀の将来を悲観している大きな理由です。

銀行は意外と「規模の経済」が強い業種です。

銀行のシステム。

セキュリティ。

コンプライアンス。

監査。

本部機能。

人事。

法務。

営業企画。

こういったものは、銀行の規模が2倍になったからといって、単純に2倍必要になるわけではありません。

例えば、100万人の顧客を抱える銀行と、10万人の顧客を抱える銀行があったとしても、システムや本部機能を10倍用意する必要はありません。

つまり、規模が大きくなるほど、1顧客あたり・1預金あたり・1融資あたりの固定費を下げることができます。

これが銀行における「規模の経済」です。

実際、金融庁の議論でも、金融機関には規模の経済が働き、大規模な金融機関ほど効率的になる傾向が指摘されています。

だからこそ銀行業界では、

大きい銀行がさらに大きくなる

という現象が起きやすい。

一方、小規模な銀行はどうでしょうか。

同じようなシステム費用、規制対応、コンプライアンスコスト、本部機能。

それを少ない預金・融資・顧客数で負担しなければなりません。

これは長期的にはかなり厳しい構造です。

だから地銀の再編は止まらない

実際、金融庁も地域金融機関の経営統合や業務効率化、システム共同化を後押ししています。

2026年には、中小の地域金融機関について、勘定系システムなどの共同化を通じたコスト削減を支援する制度も拡充されました。

これは裏を返せば、

今の銀行の数と仕組みを、そのまま維持するのは難しい

ということでもあります。

私は、今後はまず規模の小さい地銀から再編が進んでいくと思っています。

そして、その先には「県内トップクラスの地銀だから大丈夫」という話でもなくなる可能性があります。

人口減少。

預金競争。

融資市場の縮小。

ネット銀行との競争。

証券会社との競争。

システムコスト。

人件費。

規制対応。

これらを考えると、地方の中核銀行であっても、将来的には単独で生き残ることが難しくなるケースが出てくると思います。

「うちの県では一番大きい銀行だから大丈夫」

という時代ではなくなるかもしれません。

銀行の投資信託販売も、このままでは厳しい

そして、もう一つ私が銀行業界に限界を感じているのが、投資信託の販売です。

銀行では、グループの証券会社などと連携して投資商品を販売しています。

しかし、銀行員として現場を見ていると、

「本当に顧客の資産形成に適した商品なのか?」

と思ってしまうことがあります。

もちろん、すべての商品が悪いわけではありません。

ただ、銀行の収益構造を考えれば、手数料の高い商品を販売するインセンティブが生まれやすいのも事実です。

銀行員にとって、投資信託を販売するとことは営業実績になります。

手数料収入にもなります。人事評価にも影響します。

一方、

「お客様には低コストのインデックスファンドをネット証券で積み立てるのがいいですよ」

と説明しても、銀行の収益にはほとんどなりません。

ここには構造的な矛盾があります。

ただし、証券会社がなくなるとは思わない

ここは少し冷静に考える必要があります。

証券会社そのものが消えるとは思いません。

むしろ、残る証券会社と淘汰される証券会社に分かれていくのだと思います。

若い世代は、商品の情報を自分で調べられます。

YouTube。

SNS。

ブログ。

比較サイト。

金融庁の情報。

そしてネット証券。

昔のように、

「銀行の窓口で説明された商品を、そのまま買う」

という行動は減っていくでしょう。

特にNISAでは、金融庁が長期・積立・分散投資を資産形成の基本として案内しています。

情報格差が縮小すればするほど、

「よく分からないから銀行に任せる」

という市場は小さくなっていくはずです。

証券会社も、対面営業だけに依存するビジネスモデルは厳しくなっていくと思います。

そして、私が一番危機感を持っているのが「人力営業」

ここからは、完全に私個人の体感です。

私は地方銀行で働いています。

そして現在でも、

インターネットバンキングを人力で推進する。

定期預金を電話でセールスする。

営業担当者が一件一件電話する。

こういったことが普通に行われています。

もちろん、人が介在することに意味がある商品もあります。

高齢のお客様へのサポートなどは、むしろ人間が対応した方がいいでしょう。

しかし、

ネットで完結できるものまで人力で推進する

という発想には限界があります。

なぜなら、人間の時間は有限だからです。

100人の職員が電話をかけて手続きを促すより、使いやすいアプリを作って、顧客自身が簡単に手続きできるようにした方が、本来は効率的です。

銀行が本当にデジタル化するなら、

人間にデジタルサービスを売らせる

のではなく、

デジタルサービスそのものを改善する

方向に進むべきだと思います。

なぜ銀行は変われないのか

これも銀行員として感じることですが、銀行組織には独特の文化があります。

基本的に、上司の指示は強い。

そして、その上司もまた、過去の成功体験を持っています。

昔は、

電話をかける。

訪問する。

お願いする。

定期預金を集める。

融資を伸ばす。

こういった人海戦術で成果が出ました。

だから、

「昔これで成功した」

という経験が、次の世代にも引き継がれていきます。

すると、

上司が部下に人力営業を指示する。

部下がまた下の世代に同じことを指示する。

誰も本質的な仕組みを変えない。

そんな負のスパイラルが生まれます。

そして気がつけば、

「ネットバンキングを推進するために電話をかける」

という、少し不思議なことが起こります。

地銀の未来は「淘汰」より「再編」になる

ここまでかなり悲観的なことを書きました。

ただ、私は「地方銀行が全部なくなる」と言いたいわけではありません。

むしろ、

数が減る

のだと思っています。

大きな銀行。

地域で圧倒的なシェアを持つ銀行。

デジタル化に成功した銀行。

コストを抑えられる銀行。

非金融サービスまで含めて収益源を多様化できる銀行。

こういった銀行は残るでしょう。

一方で、

「昔からこの地域にあるから」

「昔からのお客様がいるから」

だけでは、これからの競争を乗り切るのは難しくなると思います。

実際、財務省も人口減少やデジタル化を背景に、地方銀行を取り巻く金融経済圏の再編が進んでいると指摘しています。

地銀の再編は、もはや特殊な出来事ではありません。

これからさらに進んでいくのではないでしょうか。

では、地方銀行員はどうするべきなのか

ここまで書いておいて、最後は自分自身の話になります。

私は地方銀行に勤めています。

だからこそ、銀行業界の未来に対して楽観的にはなれません。

「金利が上がったから銀行は儲かる」

というニュースを見ると、

「確かに今はそうだろう」

と思います。

しかし、私はその先を見ています。

預金競争。

人口減少。

NISAによる資産運用の変化。

ネット銀行。

ネット証券。

規模の経済。

システムコスト。

人手不足。

そして、古い組織文化。

これらが同時に進んでいます。

短期的には、地銀の業績はまだ伸びるかもしれません。

しかし、10年後、20年後も今と同じ数の地方銀行が存在しているとは、私は思いません。

だからこそ、私は自分の資産形成を進めています。

会社がどうなるかを予想するより、自分自身が会社に依存しなくても生きられる状態を作っておく。

それが一番確実だからです。

そして、できるだけ早くFIREしたい。

これが、地方銀行で働く私の本音です。

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この記事を書いた人

FIREを目指しながら、投資・プログラミング・家庭菜園・資格勉強に取り組んでいます。試行錯誤しながら積み上げる日々を記録するブログです。

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